若夫婦
さて、同乗した夫婦はヨルダン人で敬虔なイスラム教徒だ。奥さんは頭に白い
ベールをかぶっている。若旦那は(おそらく)私より少し若く理解しやすい理
路整然とした英語を話す。ロジカルでコンピュータの様に単純なのに不思議に
人柄が感じられる。話し相手の内部を探るような所がなく、それが私にとって
とても気軽に感じられた。カナダで仕事をしており、つい先日ヨルダンに戻っ
てきた。今度は奥さんをつれてシリアに行くのだそうだ。
それなりの地位にある人の様だった
「小渕内閣で日本は変わるのかい?」
前席に座ってる私の耳元で、若旦那がいろいろ話してくれる。通関手続きや書
類の書き方、ヨルダンとシリアの比較、ダマスカス町の事やシリアを旅する上
での注意点など、どうでも良い話題も多いのだが、彼の話は私の不安を少しづ
つ消していってくれたのも事実だ。
若奥さんには一つ申し訳ないことをした。
国境手前の売店で休んでいる時。ボンネットを開けてエンジンを冷やしている
セルビスの写真を撮ってしまった事だ。中に奥さんがいることを知らずに・・・
カメラを向けた瞬間奥さんはシートの下にさっと身を隠した。
アンマンから2時間くらいで国境に着いた。
ゲートでパスポートを見せる際に、通関料もそこで払うのだと思いこんだ私は
10JD札を挟んで渡した。私のこの間抜けな行為が大いにうけて大爆笑となり、
セルビスの中は一気に和やかな雰囲気になった。
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